看護師として病院に勤務する美香(石橋静河)は女子寮で一人暮らし。日々患者の死に囲まれる仕事 と折り合いをつけながら、夜、街を自転車で駆け抜け向かうのはガールズバーのアルバイト。作り笑いとため息。美香の孤独と虚しさは簡単に埋まるものではない。
建設現場で日雇いとして働く慎二(池松壮亮)は古いアパートで一人暮らし。左目がほとんど見えない。年上の同僚・智之(松田龍平)や中年の岩下(田中哲司)、出稼ぎフィリピン人のアンドレス(ポー ル・マグサリン)と、何となくいつも一緒にいるが、漠然とした不安が慎二の胸から消えることはない。
ある日、慎二は智之たちと入ったガールズバーで、美香と出会った。美香から電話番号を聞き出そう とする智之。無意味な言葉を喋り続ける慎二。作り笑いの美香。 店を出た美香は、深夜の渋谷の雑踏の中で、歩いて帰る慎二を見つける。
「東京には1,000万人も人がいるのに、どうでもいい奇跡だね」。
路地裏のビルの隙間から見える青白い月。
「嫌な予感がするよ」。「わかる」。
二人の顔を照らす青く暗い光。
建設現場。突然智之が倒れ、そのまま帰らぬ人となった。葬儀場で二人は再会する。言葉にできない感情に黙る慎二と、沈黙に耐えられず喋り続ける美香。「俺にできることがあれば何でも言ってくれ」と慎二が言うと、美香は「死ねばいいのに」と悲しそうな顔をした。 過酷な労働を続ける慎二は、ある日建設現場で怪我をする。治療で病院に行くと、看護師として働く美香がいた。「また会えないか」と慎二が言うと、美香は「まぁ、メールアドレスだけなら教えてもいいけど」と答える。
夜、慎二は空を見上げる。
「携帯、9,700円。ガス代、3,261円。電気、2,386円。家賃 65,000円、シリア、テロリズム、
食費 25,000円、ガールズバー 18,000円、震災、トモユキが死んだ、イラクで56人死んだ、
薬害エイズ訴訟、制汗スプレー 750円、安保法案、少子高齢化......、会いたい」
新宿。二人は歩く。
「ねぇ、なんであの時、私達笑ったんだろう、お通夜の後」「分からない」
「ねぇ、 放射能ってどれぐらい漏れてると思う」「知らない」
「ねぇ、恋愛すると人間が凡庸になるって本当かな」「知らない」
不器用でぶっきらぼうな二人は、近づいては離れていく。
背筋をのばしてざかざか歩く。つんのめる勢いでいっぱいしゃべる。
三浦しをん(小説家)
この映画で描かれる恋愛は、うっとりするようなものでも
角田光代(小説家)
ぼくは、この映画を見ながら、最良の詩を読むときだけに感じる
高橋源一郎(小説家)
生きれば生きるほど窮屈になっていくこの世界で
福永浩平(雨のパレード・ミュージシャン)
混沌とした現代社会。私たちは幸せという根を何処にはらせるのだろう。
清川あさみ(アーティスト)
カラオケは好きじゃないけど、この映画のカラオケのシーンは大好きです。
村上虹郎(俳優)
東京の夜に黒はないけど、その色彩は淀みの中で痛々しくも余計に愛おしい!
水道橋博士(芸人)
私たちは希望から離れてどう歩んでいくことができるのだろうか。
いとうせいこう(作家・クリエイター)
知っている言葉のしらない部分に出会った。
前田エマ(モデル)
この映画に私は東京を見出そうとした。まぎれもなくそこにあるのだが
横浜聡子(映画監督)
2011年、絶望を誘発させないかわりに派手に希望を持つことを
大森靖子(超歌手)
言葉に身動きを拘束されている二人が、言葉によって解放される。
武田砂鉄(ライター)
まずは詩から作られた映画ということに驚きました。
早見あかり(女優)
私たちは、あるとき誰かと目が合い、そのことによって固有の存在に
岸政彦(社会学者)
この時代と、この街が、むかし大嫌いだった。
今だってぜんぜんスキじゃない。
大森立嗣(映画監督)
言葉と死。混沌の中で手をのばし続ける。
今日マチ子(漫画家)