Buzzes!

背筋をのばしてざかざか歩く。つんのめる勢いでいっぱいしゃべる。

三浦しをん(小説家)

この映画で描かれる恋愛は、うっとりするようなものでも

角田光代(小説家)

ぼくは、この映画を見ながら、最良の詩を読むときだけに感じる

高橋源一郎(小説家)

生きれば生きるほど窮屈になっていくこの世界で

福永浩平(雨のパレード・ミュージシャン)

混沌とした現代社会。私たちは幸せという根を何処にはらせるのだろう。

清川あさみ(アーティスト)

カラオケは好きじゃないけど、この映画のカラオケのシーンは大好きです。

村上虹郎(俳優)

東京の夜に黒はないけど、その色彩は淀みの中で痛々しくも余計に愛おしい!

水道橋博士(芸人)

私たちは希望から離れてどう歩んでいくことができるのだろうか。

いとうせいこう(作家・クリエイター)

知っている言葉のしらない部分に出会った。

前田エマ(モデル)

この映画に私は東京を見出そうとした。まぎれもなくそこにあるのだが

横浜聡子(映画監督)

2011年、絶望を誘発させないかわりに派手に希望を持つことを

大森靖子(超歌手)

言葉に身動きを拘束されている二人が、言葉によって解放される。

武田砂鉄(ライター)

まずは詩から作られた映画ということに驚きました。

早見あかり(女優)

私たちは、あるとき誰かと目が合い、そのことによって固有の存在に

岸政彦(社会学者)

この時代と、この街が、むかし大嫌いだった。
今だってぜんぜんスキじゃない。

大森立嗣(映画監督)

言葉と死。混沌の中で手をのばし続ける。

今日マチ子(漫画家)

都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。
夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、
誰も愛さない間、きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。
(詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』より「青色の詩」)

INTRODUCTION

インスタントな自分語りとコピペされた悪意が量産される世の中で、言葉の生命はすり減っていく。そんな時代に、最果タヒは詩を生んだ。

彼女は2008年当時、女性としては最年少の21歳で第13回中原中也賞を受賞するなど、「いま最も新しい表現者」として注目されている詩人だ。現代詩が持っていた“難解”なイメージを覆し、わかりやすく日常的な言葉の連なりで、小説やポップソングやマンガやアニメだけではつかみきれない、現代人の憂鬱と希望を浮き彫りにする。

16年5月の発売以来、現代詩集としては異例の累計27,000部の売上げを記録している最果タヒの「夜空はいつでも最高密度の青色だ」。世代や性別を超えて熱烈な支持を受けているこの傑作詩集が、誰も予想していなかったかたちで映画として生まれ変わった。

詩をドラマとして表現することに挑んだ脚本・監督は、33歳にして本作で12本目の長編映画となる石井裕也。

24歳でアジア・フィルム・アワード第1回「エドワード・ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞、その後もロッテルダム国際映画祭や香港国際映画祭でも特集上映が組まれ大きな注目を集め、『川の底からこんにちは』(09)で日本映画史上最年少の 28歳で第53回ブルーリボン賞監督賞を受賞、さらに13年『舟を編む』で第37回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ数多くの賞を受賞した。日本のみならず、世界でいま最も期待を集めている若手映画監督である。そんな石井裕也監督の最新作となる本作では、現代の東京の片隅に生きる若い男女の、言葉にならない感情の震えを映像にすくい取り、優しく愛おしい、リアルで繊細な恋愛映画として完成させた。

ヒロインの美香に抜擢されたのは新人・石橋静河。看護師をしながら夜はガールズバーで働き、しっかり地に足をつけた生活を送りながらも、不安と孤独と不機嫌を胸の奥に抱えている美香を全身で演じきる。そんな美香と出会う慎二に池松壮亮。工事現場で働きながら、社会に適応しきれない自分にもがく青年の姿を、稀有な存在感で演じる。

「俺って変だから」「へえ、じゃあ私と同じだ」

死の予感ばかりがあふれている息苦しい現代の東京で、自分の居場所を見失った二人が、互いに向き合って初めて見つける希望。早くも石井裕也の最高傑作との呼び声が高い、最高密度の恋愛映画が誕生した。

STORY

看護師として病院に勤務する美香(石橋静河)は女子寮で一人暮らし。日々患者の死に囲まれる仕事 と折り合いをつけながら、夜、街を自転車で駆け抜け向かうのはガールズバーのアルバイト。作り笑いとため息。美香の孤独と虚しさは簡単に埋まるものではない。

建設現場で日雇いとして働く慎二(池松壮亮)は古いアパートで一人暮らし。左目がほとんど見えない。年上の同僚・智之(松田龍平)や中年の岩下(田中哲司)、出稼ぎフィリピン人のアンドレス(ポー ル・マグサリン)と、何となくいつも一緒にいるが、漠然とした不安が慎二の胸から消えることはない。

ある日、慎二は智之たちと入ったガールズバーで、美香と出会った。美香から電話番号を聞き出そう とする智之。無意味な言葉を喋り続ける慎二。作り笑いの美香。 店を出た美香は、深夜の渋谷の雑踏の中で、歩いて帰る慎二を見つける。

「東京には1,000万人も人がいるのに、どうでもいい奇跡だね」。
路地裏のビルの隙間から見える青白い月。
「嫌な予感がするよ」。「わかる」。
二人の顔を照らす青く暗い光。

建設現場。突然智之が倒れ、そのまま帰らぬ人となった。葬儀場で二人は再会する。言葉にできない感情に黙る慎二と、沈黙に耐えられず喋り続ける美香。「俺にできることがあれば何でも言ってくれ」と慎二が言うと、美香は「死ねばいいのに」と悲しそうな顔をした。 過酷な労働を続ける慎二は、ある日建設現場で怪我をする。治療で病院に行くと、看護師として働く美香がいた。「また会えないか」と慎二が言うと、美香は「まぁ、メールアドレスだけなら教えてもいいけど」と答える。

夜、慎二は空を見上げる。
「携帯、9,700円。ガス代、3,261円。電気、2,386円。家賃 65,000円、シリア、テロリズム、
食費 25,000円、ガールズバー 18,000円、震災、トモユキが死んだ、イラクで56人死んだ、
薬害エイズ訴訟、制汗スプレー 750円、安保法案、少子高齢化......、会いたい」

新宿。二人は歩く。

「ねぇ、なんであの時、私達笑ったんだろう、お通夜の後」「分からない」
「ねぇ、 放射能ってどれぐらい漏れてると思う」「知らない」
「ねぇ、恋愛すると人間が凡庸になるって本当かな」「知らない」

不器用でぶっきらぼうな二人は、近づいては離れていく。

CAST

石橋静河

COMMENT

今回の石井組での初主演は、今まで生きてきて一番幸せな時間でした。本当に右も左もわからなくて、すごく苦しくて大変でしたが、石井監督には、余計なものをバリバリ取って、表現というものはこうやるんだよというのを、教えていただいたような感じです。自分が生きているなって思う瞬間がたくさんありました。一番悔しかったのは、監督に言われたことが思うようにできないっていうもどかしさ。でも、監督は本当に全部見ていてくれていて。ただ思いっきりやればいいんだという安心感と共に、すごく高い壁でした。池松さんが慎二として横にいてくれたからこそできた部分も大きいです。池松さんはいつも見ている視点が大きいなと思いました。最初に会った時から、慎二でいてくれて、どんな時もドシッと受け止めてくれるような感じでした。 本当に感謝しています。

PROFILE

1994年7月8日生まれ。東京都出身。4歳からクラシックバレエをはじめ、09年より米・ボストン、カナダ・カルガリーにダンス留学後13年に帰国し、コンテンポラリーダンサーとして活動を始める。15年より舞台や映画へ役者として活動の場を広げ、16年にはNODAMAP舞台「逆鱗」にも出演。17年には本作の他に『PARKS パークス』(瀬田なつき監督 4/22 公開)、『うつくしいひと サバ?』(行定勲監督)が公開。今後が期待される 大型新人女優である。

池松壮亮

COMMENT

石井監督とは『バンクーバーの朝日』以来2年半ぶりくらいの現場でした。久しぶりに現場で会った石井監督は、更に更に上にいっていたし、そういう場所でまた会えて楽しかったです。2年半ぶりでも、現場で会ったらやっぱり同じ方向を向いていると思いました。慎二と美香という役を監督と石橋さんと三人でつくっていく中で、僕が目指すものと、石井監督が目指すものと、 石橋さんが目指すものが、いつの間にか合わさっていたような感覚でした。 最初に脚本を読んだ時は、詩の映画化という今までにないことなのに、やっぱり石井監督らしい人間賛歌だと感じました。それを“人を想う”、“恋をする”ということに落とし込んでいて、すごいなと。石橋さんは、初めての主演がこういう役でとてつもないプレッシャーだったと思います。日々食らい付いていく石橋さんの姿を見て心動かされました。普段は元気な方なんですけど、でも時々とんでもなく寂しそうな顔をするんです。その顔を絶対に忘れずに慎二をやりたいなと思っていました。

PROFILE

1990年7月9日生まれ。福岡県出身。03年トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』でデビュー。14 年には、『紙の月』(吉田大八監督)、『愛の渦』(三浦大輔監督)、『海を感じる時』(安藤尋監督)、『ぼくたちの家族』(石井裕也監督)と注目を集めた作品に次々と出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞、ブルーリボン賞助演男優賞を受賞、若手演技派俳優の地位を確立する。その他の主な出演作に、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(松居大悟監督 /13)、『バンクーバーの朝日』(石井裕也監督 /14)、『私たちのハァハァ』(松居大悟監督 /15)、『劇場版 MOZU』(羽住英一郎 /15)、『海よりもまだ深く』(是枝裕和監督 /16)、『無伴奏』(矢崎仁司監督 /16)、『ディストラクション・ベイビーズ』 (真利子哲也監督 /16)、『セトウツミ』(大森立嗣監督 /16)、『DEATH NOTE Light up the NEW world』(佐藤信介 監督 /16)、『だれかの木琴』(東陽一監督 /16)、『永い言い訳』(西川美和監督 /16)、『続・深夜食堂』(松岡錠司監 督 /16) など。今や日本映画界に欠かせない俳優である。

松田龍平

PROFILE

1983年5月9日生まれ、東京都出身。99年『御法度』で俳優デビュー。近年の主な作品に『まほろ駅前多田便利軒』『まほろ駅前狂騒曲』(大森立嗣監督 /11・14)、『北のカナリアたち』(阪本順治監督 /12)、『探偵はBARにいる』シリーズ(橋本 一監督 /11・13)、『舟を編む』(石井裕也監督 /13)、『ジヌよさらば ~かむろば村へ~』(松尾スズキ監督 /15)、『モヒカン 故郷に帰る』(沖田修一監督 /16)、『ぼくのおじさん』(山下敦弘監督 /16)があり、『舟を編む』では第37回日本アカデミー賞最優秀男優賞ほか数多くの賞を受賞。本作には『舟を編む』以来の石井組への出演となる。また今後の待機作には、『散歩する侵略者』(黒沢清監督 / 17 年 9/16 公開)、『探偵はBarにいる 3』(17 年冬公開予定)、『羊の木』(吉田大八監督 /18 年公開予定)などが控えている。

市川実日子

PROFILE

1978年6月13日生まれ、東京都出身。00年に映画『タイムレスメロディ』(奥原浩志監督)で長編映画デビュー。『とらばいゆ』(大谷健太郎監督 /01)で第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞を受賞。『blue』(安藤尋監督 /03) では、モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞し、また16年公開『シン・ゴジラ』(樋口真嗣監督)では演技が高く評価され、 第71回毎日映画コンクール助演女優賞を受賞した。主な出演作は、『めがね』(萩上直子監督/07)、『マザーウォーター』(松本佳奈監督 /10)、『レンタネコ』(荻上直子監督 /12)、『ミュージアム』(大友啓史監督 /16)などがある。石井組は、『ぼくたちの家族』(14)に続き、2作品目の出演となる。

田中哲司

PROFILE

1966年2 月18日生まれ、三重県出身。日本大学芸術部演劇学科を卒業。数多くの映画・TV ドラマに出演する一方、長塚圭史、永井愛、栗山民也、小川絵梨子、赤堀雅秋などの演出の舞台でも活躍。近年の主な出演作は、『アウトレイジ ビヨンド』(北野武監督 /12)、『ストロベリーナイト』(佐藤裕市監督 /13)、『そして父になる』(是枝裕和監督/13)、『愛の渦』(三浦大輔監督/14)、『映 画 ビリギャル』(土井裕泰監督/15)などがある。

佐藤玲

PROFILE

1992年7月10日生まれ、東京都出身。12年に蜷川幸雄演出の舞台『日の浦姫物語』の娘役でデビューを果たす。14 年に映画『MOOSIC LAB 2014 ~おばけ~』(坂 本悠花里監督)で初主演。主な出演作は『リュウグウノツカイ~ 17 歳の妊娠サークル~』(ウエダアツシ監督 /14)、『イニシエーション・ラブ』(堤幸彦監督 /15)、 『色あせてカラフル』(横山久美子監督 /15)、『少女』(三島有紀子監督 /16)など がある。また、今年1月公開マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 – サイレンス –』 に出演するなど、国内外問わず活躍中。

三浦貴大

PROFILE

1985年11月10日生まれ、東京都出身。10年に映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(錦織良成監督)でデビュー。近年の出演作に『永遠の0』(山崎貴監督 /13)、『サムライフ』(森谷雄監督 /15)、『ローリング』(冨永 昌敬監督 /15)、『進撃の巨人』シリーズ(樋口真嗣監督 /15)、『怒り』(李相日監督 / 16)、『マンガ肉と僕』(杉野希妃監督 / 16 ) などに出演。 待機作に『ブルーハーツが聴こえる~ 1001のバイオリン』(李相日監督 /4月8日公開)、『世界は今日から君のもの』(尾崎将也監督 /17年公開)など。

ポール・マグサリン

PROFILE

1989年11月3日生まれ、フィリピン出身。08年に来日後、公民館で日本語を学ぶ。11年にモデル・俳優活動をスタート。母語のタガログ語に加え、英語と日本語の3か国語を操る。その言語力を活かしてTVドラマやバラエティ番組等で活躍。自身にとって本作が映画初出演となる。主な出演作は、『Halo Halo House~ ホセのニッポン・ダイアリー』(海外ドラマ 西堀監督 /15)、『放送禁止~ワケあり人情 食堂~』(CX 特番 /17) など。

大西力

PROFILE

1943年生まれ、大阪府の天六出身。61年京都教育大学美術科に入学するが、ジャズに傾倒し中退。その後さまざまな仕事を経て、79年に伝説的バンド「村八分」にドラムスとして入るも、バンド解散と共に退団。86年新宿三丁目にある、映画、演劇、テレビ関係者が多く集まる居酒屋「池林房」に就職し、店主の太田篤哉の元で長く働く。93年退職後京都に移住し、95年バー「ジャンゴ」を開店。2016年閉店。 知人のフランス人の映画に出演後、同店閉店の直前に来店した石井監督から出演のオファーを受ける。

野嵜好美

PROFILE

1983年11月25日生まれ、愛知県出身。07年、横浜聡子監督の映画『ジャーマン+雨』にて主演し、話題を集める。その後『歓喜の歌』(松岡錠司監督 /08)、『感染列島』(瀬々敬之監督 /09)、『ウルトラミラクルラブストーリー』(横浜聡子監督 /09)、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(大森立嗣監督 /10)、『おばあちゃん女の子』(主演・横浜聡子監督 /11)、『ロマンス』(タナダユキ監督 /15)、『俳優 亀岡拓次』(横浜聡子監督 /16)など、出演作多数。

DIRECTOR

石井裕也

監督 石井裕也

PROFILE

1983年6月21日生まれ。埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(05)でPFFアワードグランプリを受賞。24歳でアジア・フィルム・アワード第1回「エドワード・ ヤン記念」アジア新人監督大賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭や香港国際映画祭では自主映画4本の特集上映が組まれ大きな注目を集めた。商業映画デビューとなった『川の底からこんにちは』(10)がベルリン国際映画祭に正式招待され、モントリオール・ファンタジア映画祭 で最優秀作品賞、ブルーリボン監督賞を史上最年少で受賞した。『舟を編む』(13)では第37回日本アカデミー賞にて、最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞、また米アカデミー賞の外国語映画賞の日本代表に史上最年少で選出される。『ぼくたちの家族』(14)では、家族の絆を正面から描き、国内外で高い評価を得る。『バンクーバーの朝日』(14)では1930年代のカナダを舞台に、日経移民の苦悩や葛藤を丁寧に描き、日本国内でヒットを記録するとともに、バンクーバー国際映画祭で観客賞を受賞した。今、世界中で最も新作が期待される若手映画監督である。

ORIGINAL

原作

原作者 最果タヒ

PROFILE

1986年生まれ。06年現代詩手帖賞を受賞。07年詩集「グッドモーニング」(新潮社)で中原中也賞受賞。12年詩集「空が分裂する」(新潮社)、14年詩集「死んでしまう系のぼくらに」(リトルモア)刊行、後者で現代詩花椿賞受賞。小説家としても活躍、15年「かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。」「星か獣になる季節」、16年「渦森今日子は宇宙に期待しない。」「少女ABCDEFGHIJKLMN」などがある。16年には初のエッセイ集「きみの言い訳は最高の芸術」を刊行。本作の原作となる第4詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は16年5月にリトルモアより刊行、重版を重ね詩集としては異例の27,000部を発売。また最新作、小説「十代に共感する奴はみんな嘘つき」(文藝春秋)が現在絶賛発売中。

COMMENT

 自分の人生だとしても、その全貌など見えやしない。生きていくことの果てにあるものをひとつずつ、ちいさいものを、ひとつずつ拾って、明日ぐらい、明後日までとはいかなくても、明日ぐらいは照らしている。人生の果てに、いったいどんな景色が広がるかなんてわかるはずもなかった。ただ、明日に少しだけ、ほんの少しだけでも「いい予感」がするなら、それだけで十分だ。生きるっていうことは思った以上に刹那的なもので、決して積み重ねていくことでも、記録していくことでも、自分を作っていくことでもないのかもしれない。この映画を見ていて、何度もそう思った。ただ、私とは関係ないところに波打っている命があって、そこから放り出されないように、そのときそのとき、できるかぎりバランスをとって波に乗りつづけている。私が見るべき私の命はきっと今、この瞬間のものだけだ。
「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」、今という一瞬でしかない時に、全身を投げ出すようにして生きる人々の映画でした。どんなに親しくても、そばにいる人たちの過去に何があったのか、すべてを思いやることなんてできないし、同じ未来を生きることなど約束できるはずもない。だからこそ、せめて、彼らの「今」に不恰好でもいいから、取り繕わずに飛び込みたい。器用であることや、人生そのもののつじつま合わせのように透明になって生きていっても何も残せないだけだ、誰の記憶にも残りやしない。この映画には、無根拠で無遠慮な明るさなんて一つもないけれど、でも「今」という生に対して、ひたすらにポジティブだった。みっともなくてもぶっきらぼうでも、それでも「今」そのものを生きたとき、それはきっと愛らしい姿をしている。そう、強く信じることができる映画です。

 私は詩を書いていて、ずっと、不器用にしか、下手くそにしか、「今」を生きることができない人たちに、届く詩が書きたいと思っていた。誰にも理解されなくても、気持ちをうまく説明できなくても、それで別にいいんだ、「今」をうまくやりすごす必要なんてない。わかりやすさばかりを優先して、自分の不器用な部分を捨ててしまわないでほしい。ありのままになればなるほど、曖昧で、言葉にできない感情は増えていくけれど、そこまで届く詩を、いつか書くから。書いてみせるから。
 愛おしい不器用さに溢れた、この映画が私の詩集をもとに作られたという、そのことが光栄でなりません。願わくは、多くの人に観てほしい。自分自身の「今」を不器用な手つきで抱きしめようとするすべての人に。

ENDING THEME

NEW WORLD

The Mirraz

The Mirraz

PROFILE

畠山承平(左、Vo,G *全楽曲の作詞・作曲・アレンジを手掛け、MV等も自作する。)、佐藤真彦(中央、G)、中島ケイゾー(右、B)からなるロックバンド。2006年9月に畠山が中心となって結成。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」とリリースを重ね、洋邦ロックファンから注目を集める。2012年1月にインディーズ最後のアルバムをリリースし、同年7月16日にEMI Music Japanへのメジャー移籍を発表。メジャー移籍後はシングル「僕らは/気持ち悪りぃ」「傷名/うるせー」を発表。Vo.畠山も多いに影響を受けたサザンオールスターズ桑田佳祐氏が選ぶ今年のベスト20に「気持ち悪りぃ」が6位にランクインするなど、メジャー移籍後もミイラズらしい活動をくりひろげている。2016年にはめでたく結成10周年を迎え、初のベストアルバムもリリース。2017年4月、完全独立宣言をし、新事務所兼新レーベルの『KINOI,INC.』を立ち上げ、9枚目のアルバム「Mr.KingKong」をリリース!今後はより自由に、音楽業界の枠に捉われずに活動していく予定。

The Mirraz Vo.畠山 承平

COMMENT

この度、僕らミイラズの「NEW WORLD」という楽曲をこの映画に使いたいという話をいただいて、石井監督には何かと縁やシンパシーを感じていたので、迷わず使って欲しいと伝えました。

ただ、この楽曲はものすごくメッセージ性が強いので、色々と大丈夫かな?と思ったのですが、作品を見て、最後にエンドロールに流れる自分の曲を聴いて、ああそうか、この作品にぴったりの楽曲だったんだなぁ、と納得し、感動しました。自分でもわかっていなかったこの楽曲が持つパワーに圧倒されました。

この曲はミイラズが一番攻めてる時期に作った楽曲で、自分的には激押しの曲だったのですが、メッセージ性が強すぎてタイアップがとれないんじゃないかという理由で、シングル候補から落ちてしまった曲。それが今回、めでたく映画の主題歌になれました。本当に幸せなことです。 映画を楽しんでいただいた最後にこの楽曲が流れ、そこから更にこの映画のメッセージが多くの人に伝われば幸いです。

製作:テレビ東京 東京テアトル ポニーキャニオン 朝日新聞社 リトルモア

配給:東京テアトル リトルモア

©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

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